学生ブログ:がんゲノム医療の時代を見据えた研究の必要性 ~その1~

私は以前から放射線治療関連の研究(特に、AIを用いた放射線治療後の予後予測、Radiomics、Dosiomics)を行なっている。昨年、約5年間の放射線治療生活に幕を閉じ、薬剤関連の企業に転職することになった。

製薬企業の非常に多くの治験によって各診療ガイドラインは目覚ましいスピードで変化している。昨今ではがんゲノム医療が注目を集めており、個々人の遺伝子変異に合わせた治療が行われるようになりつつあり、本邦でも関連法規が急速に整備されている。個々の遺伝子変異をターゲットとした分子標的治療の奏功率は、放射線治療のそれと比べても非常に良好である。放射線治療業界は遺伝子変異をターゲットとした治験や前臨床データは少なく、製薬業界から学ぶべきことは多いと感じている。筆者は製薬業界や放射線治療業界に精通しているわけではないが、双方を勉強していく中で、例え同じ処方線量であっても遺伝子変異の有無によって奏功率は異なるのではないかと感じている。

がんゲノム医療に欠かせないのは、正確かつ迅速な遺伝子検査である。遺伝子検査は薬剤を処方するためのコンパニオン検査と、標準治療がないまたは終了した患者を対象に、治験の紹介や薬剤の適応を判断するために行う遺伝子パネル検査に大別されるが、これらは全て薬物治療の適応を判断するためのものであり、放射線治療のためには使用されていない現状がある。一方で、肺癌における周術期治療の発展は目覚ましく、外科手術の前後に分子標的治療を行う複数の臨床試験が実施されており、今後は外科手術の前後にある特定の遺伝子のドライバー変異を判断するための遺伝子検査が必須となっていくだろう。放射線治療業界においても、治療前の遺伝子検査によって処方線量を変えるような時代が到来することを望んでいるし、微力ながら尽力するつもりである。

 

博士課程1年 Y.M

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