研究活動
大学院の研究
令和3年4月に放射線腫瘍学講座の大学院に入学させていただきました。私の研究の目的は食道がんに対する放射線治療後の胸椎圧迫骨折と放射線照射線量との関連を明らかにすることです。食道がんに対する放射線治療は術前治療、根治治療として世界中で広く施行されています。また放射線治療技術の進歩や化学療法の開発により、治療成績が向上しています。一方、治療成績の向上とともに長期生存例が増えることで、食道がんに対する放射線治療後の晩期毒性が明らかとなり、晩期毒性の回避・軽減が重要なテーマになっています。食道がんに対する放射線治療の晩期毒性に関して、放射線性心外膜炎・心筋虚血などが問題となっていますが、これまでほとんど指摘されていなかった晩期毒性として胸椎圧迫骨折の報告が最近なされました。しかしながら報告はまだ少なく、胸椎圧迫骨折と放射線照射線量との関連は明らかになっていません。
本研究を通じて、晩期毒性である胸椎圧迫骨折の回避・軽減が達成できれば、患者さんの生活の質(QOL)の向上に貢献できると考えています。
令和7年4月に放射線腫瘍学講座の大学院に入学させていただきました。私の研究テーマは放射性同位元素(RI)内用療法と染色体異常に関する研究です。
RI内用療法は、特定の腫瘍に取り込まれる性質を持ったRIを患者さんの体内に投与することで、体の内側から腫瘍細胞限局的に放射線照射を行うことができる治療です。近年新規薬剤が保険収載されており、さらなる薬剤開発も進んでいることから、今後急速に普及することが予想される領域です。
放射線被ばくによるDNA損傷の修復ミスによって生じる染色体異常は、放射線被ばく線量と強く相関することが知られており、緊急被ばく医療の分野では末梢血リンパ球の染色体異常解析が線量評価の方法として確立しています。
今回の研究では、RI内用療法を受けた患者さんの染色体異常を経時的に解析することで、RI内用療法の治療効果や有害事象を予測できるかどうか検証します。
本研究を通じて、患者さんが治療を受けている期間中に治療効果や有害事象を予測できるようになる可能性があり、予測結果に応じて治療の適応や強度を決められるようになると考えています。
