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血液疾患(全身照射)

広島大学病院における全身照射の特色

骨髄移植(造血幹細胞移植)に対して放射線治療が果たす役割

広島大学では、血液がんや先天的な造血不全の病気などに対する治療の一つとして造血幹細胞移植を実施しています。当科は、血液内科や小児科と協力して全身照射を行っております。

全身照射には①自己免疫を適切に抑制し、②体内に残存する腫瘍細胞を減少させ、③自身の造血機能を減弱させて移植した細胞の生着を促す、役割があります。

当院では2019年~2021年の3年間で約50件の全身照射を行っており、全国でも経験豊富な放射線治療施設です。

広島大学病院における全身照射の実際

放射線治療の流れ

担当科の医師と適応と日程について相談します。

放射線治療医による診察と説明を行います。

移植予定日のおおよそ1~2週間前に、専用のCT(治療計画CT)を撮影します。

撮影したCTをもとに、できる限り全身に放射線が過不足なく当たるよう、専用のコンピュータ(治療計画装置)を用いて放射線治療の計画をします。

小児の場合、小児病棟の看護師やチャイルド・ライフ・スペシャリストと連携して、安心して治療に取り組めるよう事前に治療室の見学を行います。
(※コロナウイルスの感染状況などにより行えない場合もあります)

実際の治療を行います。

照射時の姿勢の一例

側面からの照射や場合により前後の照射を加えることで、放射線が過不足なく当たるように工夫しています。

側面からの照射。線量の均一性を保つため、顔の周りにゲルの入った袋を敷き詰めます(右図)。
前後からの照射。仰向けとうつぶせの姿勢で照射を行います。

有害反応を低減する工夫

病状によって可能な場合には、肺・眼球・甲状腺・精巣などの臓器を鉛の遮蔽物を用いて放射線量を低減させ、有害反応の出現を予防します。

放射線治療の線量や回数

線量や回数は病気の種類や目的によって異なります。
1日1回の照射を1日間行う場合と1日2回の照射を1日間または3日間行う場合があります。

放射線治療に要する時間

治療は有害反応を防止する目的でゆっくりと照射しますので1回に約1時間程度かかります。
安静の保持が難しいお子さんでは鎮静剤で眠ってもらい、治療を行います。

ご本人、周りの方への影響

放射線を用いて治療を行いますが、治療終了後は本人から放射線が出ることはありませんので、終了後に本人や周りの方が被曝することはありません。

放射線治療の有害反応

  • 治療後に人によっては、からだのだるさや頭が重い感じ、吐き気などが起きることがあります。しかし多くは翌日には回復します。
  • 3週間ほどたつと髪の毛が抜けてきます。化学療法の影響がない場合は通常、治療後2~3ヶ月から髪が生え始めることが一般的です。髪質や髪の量が変化することがあります。
  • まれに咳や息切れを伴った間質性肺炎を認めることがあります。
  • 治療から数年~数十年後に、性腺障害、ホルモン分泌機能低下、成長遅延、白内障、腎障害、二次がんといった晩期的な問題が生じることがあります。当院では、長期フォローアップの体制をとっており、上記の症状を早期発見し、関連する専門科とも連携をとりながら対応しております。